イデオロギーへの先入観

あたかも自由主義、民主主義でなければ発展できないかのような錯覚をしていたが、はて、米国を溺愛する自由経済、民主主義国家のフィリピンよりもベトナムのほうが治安は良いし、貧困格差は少ないし、経済的にも勢いがある。さらに言えば国民も健康的生活を送っているように見受ける。

拝金的な風潮を隠すことすら少なくなった最近の中国を見て、何が共産主義かとも思うが、冷戦はなんだったのか。朝鮮戦争、アフガン戦争、ベトナム戦争の死者は何のために死ななければならなかったのかと重ねて思う。名目上はあるべき社会体制を問うていたのかもしれんが、あれだけの犠牲が必要だったとは思えんのだよ。




ベトナム戦証博物館はアウシュビッツ絶滅強制収容所よりも気が滅入る。写真の展示になんら手加減が無い。敵兵の頭を持ち上げる米兵。その頭の下にはボロ布のようにつながった体躯の一部しかない。ああ、ベトナム社会主義であったと再認識する。

思うのだが、アメリカほど非人道的な兵器を計画的、かつ広範に使用した国は無いのではないだろうか。歴史上の強国は少なからずどこも虐殺している。殺された身からしたら殺され方に良い悪いも無いのかも知れぬが、アメリカは抜きん出ている。

−見境無く一般市民を巻き込む
−単に殺すに留まらず、子孫まで影響が及ぶような汚染的な方法をとる


第二次世界大戦の二発の原爆しかり。
ベトナム戦争時の枯葉剤しかり。
そして湾岸戦争劣化ウラン弾しかり。

確かにナチスは600万人ものポーランド人、ロマ、ユダヤ人、ロシア人らを虐殺し、ガスで殺すなどもしたが畸形で生まれたり土壌を汚染したり、遺伝的影響の残るような陰惨な方法ではなかった。人種そのものを根絶やしにしようとしてはいたのだけれども。

ナチスも旧日本軍も体制の中枢にいた者は皆、戦争犯罪者として裁かれ、処刑され、その思想や体系は途絶えているが、アメリカという国はあれだけのことをしていながら脈々と受け継いだ組織を今も維持しているわけだ。

湾岸戦争に至っては、これだけ科学技術も進歩した中で、よもや自国兵士も放射線汚染されるような兵器を使用するなど思ってもみなかっただろう。「正義」という言葉が好きなくせに、最も倫理のタガの緩い国。そう思えなくも無い。

けして過去の人間のほうが科学技術も未発達であったがゆえに過ちが多かったわけでもなく、今の人間も変わらず科学技術がより発達した過ちを犯しているというだけか。今の常識も各国の正当な主張も信用できんということか。