華僑


エルニドの宿泊客は5割が在フィリピン華僑、3割が欧米人、1割が日本人、1割が韓国人といった按配でフィリピン経済の縮図のような割合だと感じた。

フィリピンにおける華僑系は人口比率においてはたったの1.4%に過ぎないが、経済的には全体の70%ほどを占めているといわれている。5%の華僑が90%の富を寡占しているだとか、似たような根拠のわからん数字がいろんなところに転がっているが圧倒的な経済支配力を持っていることは確かなようだ。

  • フィリピン最大の銀行メトロバンクを有するジョージ・テイ
  • SMを一代で展開しBDOやChinaBankも有する中華財閥を築いたヘンリー・シン
  • ジョリビーにChowkingを経営するトニー・タン
  • フィリピン航空とタバコ業界の90%を寡占するルシオ・タン
  • 酒、ビールを牛耳り、いまやエネルギー業界へと転換を図る中華財閥コハンコ
  • マニラホテルを所有し、マニラブレッティンの社主であるエミリオ・ヤップ
  • セブパシフィック航空やロビンソンモールを有するゴコンウエイ、
  • リサール商業銀行(RCBC)、Malayan保険会社、ファーイースタン大学などを有するユーチェンコ

ここらへんの財閥トップは個人所得が皆、年間100億円を超え1000億に近い人も何人かいる。ちなみに嫌らしいのが上記のような華僑が相互に資本参入して持ちつ持たれつな関係にある場合が多い。

フィリピン最大のテレビ局ABS-CBNを経営するロペス財閥も実際はスペイン人と華僑の混血で電力会社メラルコ、通信SKYCABLE、石油会社Philippine National Oil Company、高速道路、水道などのインフラも押さえ一族の資産は100億ドルを越すとフォーブスに載っていたこともある。ちなみにPlantation Bay Cebu Resort and Spaまでもロペス財閥。


華僑の経済独占と政治との癒着がこの国の発展を阻害しているなんてことは今更重ねて言いたいわけではない。エルニドで出会った華僑は皆、前述した富豪に比べれば豆粒のような小金持ちなのだろうが、皆感心するほどに社交的だった。気安く話しかけてきて、仕事は何しているか、どこに住んでいるか、家賃は幾ら払っているのか、どこに住んだほうが住み良いかなど小一時間お喋りをするだけでかなりの情報を掴まれてしまうし、色々な情報が聞ける。であったおば様も以前は会社勤めだったがアメリカから大豆を輸入してフィリピンで豆腐屋に売るなどしているという。翌日には、ご一緒した彼女の旦那さんに、「お宅の会社がフィリピンからひとつ工場を閉鎖するなんて噂を聞いたが本当かね」などと聞かれる始末。あっと言う間の情報共有。

この圧倒的な華僑の熱量と情報網の広さ、機敏さに日本は対抗できるのか。彼らを忌避しているわけではない。活動的で勤勉で社交的で危険を伴う資本投資を厭わない彼らをただ口をあんぐりと開けて眺めているような有様だ。貧しい中華移民は恐ろしいものなしで突っ込んでいくし、富を成した華僑も飽く無きまでにコネやネットワークを使ってより高みを目指す。末恐ろしい。