運転手

日本で一緒に働いたフィリピン人の先輩から運転手を紹介して頂いた。電話がかかってきたのが女性の声だったので不思議に思ったがどうやら奥さんのようだ。今日も奥さんが同行してきた。旦那が運転手なのだが英語が得意ではないらしく、契約内容に理解の相違があってはならないと奥さんも同行してきた。

年代は40代後半だろうか。4人の子供がおり、高校3年生、小学6年生、小学4年生と1歳児だそうだ。1日会った限りでは真面目そうで大人しそうな男性だ。英語が喋られないという引け目からかおどおどとした印象を受けた。どちらかというと奥さんのほうがきびきびとしてしっかりしているように感じる。奥さんは中国系の企業に勤めているという。旦那は以前、運転手もしていたが今はタクシードライバーをして繋いでいるという。ちゃんとした家族がいるし、若すぎることも無く信頼できそうに思う。物は試しだ。

月10,000Phpの週6日10時間勤務で提示し合意。残業は1時間50Php。フィリピンの慣習によりクリスマスには1ヵ月のボーナスが支給される。安全を最優先させること、時間厳守、家族のことを他に話さないこと、勤務時間前と時間中の飲酒の禁止、交通規則の遵守を契約書に盛り込んだ。小生が勤務中は家で嫁さんを手伝い、掃除洗濯でもなんでもするという。ドライバーからの唯一の要求は週払いにして欲しいということ。

試用期間を2ヶ月設定した。この1ヵ月で運転や勤務態度を判断し、次の1ヵ月で嫁さんに判断してもらおうと思う。

このように使用人を使うというのは初めての経験だ。目的地に着くとさっと運転席から降り、ドアを開け、傘を差してくれる。一回り近く年上の運転手なので恐縮してしまう半面、正直言うと気持ちがよい。何か偉くなった気分になる。

味噌はあくまで気分になるということだ。しかし生まれながらこのような待遇を受けると勘違いしてしまうのは無理もない。ある意味非常に封建主義的な世界だ。単に裕福な家庭に生まれただけでそれを当然のものとして享受し、かつ富裕層はその特権を代々固持しようとする。王権神受説のまやかしと本質は変わらない。為政者が支配者層であるこの国は民主主義を装ってはいるが植民地時代のままにも映る。実際にその時代に生きたわけではないのであくまで想像上の植民地時代であるけれども。