新アメリカ大統領にかける期待。CervezaNegra

アメリカ大統領就任まであと3日。

アメリカ企業に勤めていながら、嫌いな国はどこかと問われれば真っ先にアメリカと答える。厳密に言えばアメリカ人というよりこれまで半世紀の政権と体制が嫌いだ。旅行好きの小生が他国のことを知るにつれ、米国による文化・体制破壊の傷跡を至る所で見るからである。

グアテマラで民主的にアルベンス大統領が選出されたことがあったが、残念ながら当政権は反米政権であった。彼は政策の一つとして米系企業であるユナイテッドフルーツの農地寡占を解消しようとしたのだが、それに制裁を与えるが如く、米国はグアテマラでクーデターを画策して政権を転覆し、その後グアテマラは独裁と30年に及ぶ内戦に苦しむことになる。ちなみにユナイテッドフルーツは50万エーカー以上の最良の土地を使うことなく所有し続けていたので、それら土地を農民に広く解放するために前年の所得申告でユナイテッドフルーツが申告していた土地価格で政府に売却するよう要求する土地改革法案を可決しただけだ。無償で接収したわけでなく、あくまで売却だったわけだが税金を逃れるために所得申告上は二束三文の土地評価しかしていなかったがために、二束三文で手離さないといけなくなった。ざまを見ろと言いたい。しかしアイゼンハワー政権幹部の多くが元重役や株主であったこともあり、にわかにグアテマラ政情がワシントンの関心ごとになる。結局民主主義や法の秩序などはどうでもよく、政治家の私欲と反米主義への恐怖が結びついただけだ。それ以降、グアテマラは貧困と政治不安に悩まされ続けている。2005年時点での富の偏在性を表すジニ係数はなんと59.9。(フィリピン46.1、日本24.9)

米国はオバマが幼少期育ったインドネシアでも同様のことをしている。戦後の独立と復興の次代に国を率いたスカルノ政権は国民の支持も厚かったが、中国ソ連よりの外交スタンスと社会主義的と目された政策が米国にとって脅威に映ったそうだ。政権転覆を目論んだ米国は、反政府活動を武器や資金を関節直接問わず供給し、陰で支援したとされる。65年、スハルトがクーデターを起こして政権を奪った後には共産主義者の大量粛清が始まり、推定100万人の命が奪われた。スハルトはその後、経済の一族支配を強め、汚職と腐敗が蔓延していった。それ以降常にテロの絶えない国となっている。

中東一医療水準の高いイラクを言いがかりをつけて崩壊させたことも記憶に新しい。大量破壊兵器の開発保持という開戦の根拠を過ちだと認めたくせに保障などしないのだろうな。戦争の混乱の中でメソポタミアの貴重な文化財が集積されるバグダッド国立博物館が略奪に遭い貴重な芸術品も霧散した。アフガニスタンに戦争をふっかけたせいでイラン旅証まで取りながら旅行を断念し、エスフェハーンやバムのペルシャ文化を見て回る旅行計画が台無しになった私怨もある。

最近のイスラエルによるガザ爆撃も、米国の国際社会での後ろ盾があってこそ武力に任せて横暴に振舞える。

米国は反米か親米かの対立軸で国々を眺め、反米国に対しては人種、民族、イデオロギー、宗教を使って分断を助長してきた。小生が米国を嫌う所以だ。それをケニア人とアメリカ人の両親の元で生まれ、インドネシアで育ったオバマは、父の政治活動の挫折と無念、インドネシアで翻弄された日々を通じて大国の横暴を目の当たりにしている。被害者として自ら体験してきたオバマが、米国の現状が建国の精神に反することを自覚して、今大統領の座に付くわけである。彼は実際にも「建国の理念に反する」と現外交政策を論じている。そして、人種、民族、イデオロギー、宗教を問わず再びアメリカ合衆国をひとつに束ねようとしている。

ここに大きな期待を抱いている。外交実績がないのが弱点などと言われもしたが、彼こそが多民族国家と他国との関係を客観視できる重要な素養を持っているのではないかと期待している。今までの手練手管に通じた外交政策通などいらぬ。

写真はフィリピンの一大ビールメーカーSanMiguelから出されているCervezaNegra。恵比寿ビールのような黒ビールの味わいが好きだ。瓶で1本30Php。60円弱である。背景にはボラカイでオバマオバマと呼びかけられた友人K氏
。ビールを持って一言。「Yes we can!」