ワルシャワ旧市街


第二次世界大戦の戦火で主要都市の殆どが50%以上破壊され、ワルシャワに至っては壊滅的なまでに焼け野原となった。そんな背景からワルシャワは観光客に敬遠されがちな街である。綺麗な街並みをみたいならばクラコフに行け。負の遺産を見たくばオシフィエンチムとビルケナウの絶滅強制収容所に行け。ワルシャワには見所は無い、と。

そんなわけで観光の点では全くもって期待していなかったが、旧市街は予想に反して良かった。戦後、瓦礫の山となった街区を写真や資料を使ってひび割れの細部にいたるまで忠実に再現したとのこと。まるで戦火を否定するような、忌まわしき記憶をなかったかのように消し去ろうとする執念を感じる。あの勤勉さ、几帳面さ、己への厳しさでもって黙々と修復したのだろう。ある粘着質を伴って。

何も予備知識がなかったら旧市街を単に綺麗に手の入れられた中世の街並みとして眺めて終わっただろう。1770なんて竣工年もそのまま再現されているので、まるで昔から変わらず存在していたかのように錯覚する。見方によっては、新築間もない中世の建物はこのような感じだっただろうと知ることのできる場所でもある。

ひとつ言えることは、いつだって昔の街並みを再現することはある程度可能だということ。確かに細部は完全に再現されないし、歴史的価値は無いかもしれない。実際に昔の人が住んでいたことへの感慨はわかない。それでもディズニーランドのようなハリボテマガイよりはよっぽど雰囲気を纏う。日本の灰色の街並みを見て思うのは、街並みを再現する執念をもてないものかということ。確かに木造家屋は脆い。100年は問題ないが、外殻は石造りのように300年、400年と持たすのは難しい。しかし式年遷宮のように繰り返し繰り返し再現し続けることはできないものか。