立て直し

火事に遭った同僚にスーツケースやPCケース、mp3プレーヤー、扇風機やコップなど助けになりそうなものを持って行った。

待ち合わせ場所にした教会まで車で行き、そこから先は道が狭いので三輪自転車タクシーにスーツケースを載せて乗り込む。数百メートルほど入り組んだ路地に部屋を借りているらしい。路地は子供達が走り回り、三輪自転車タクシーがすれ違う雑然とした地区。鉄の扉をくぐると奥に道が伸びており小さな中庭に面して3軒が隣り合っている。一軒一軒は一部屋しかないこじんまりとした家だった。そこに一家4人が寝泊りする。冷蔵庫も冷房も使わない簡素な生活。正直治安面が気になる。

近くには商店街があり惣菜や新鮮な野菜、肉も売っている。毎日食べる分だけ買えば冷蔵庫は不要かもしれない。家の合間を歩きながら、どこかに火事場泥棒に入った輩がいるのかと思うと切ない。見る限り皆、純朴そうに見えるのだが。

時間に余裕ができたらもう少し安全そうな家へ是非引っ越して欲しい。こういう現状を見てしまうと自分の贅沢な生活が申し訳なくなる。だからといって結局どうこうするわけでもないから救い難いのだけれども。彼女を職場で一人前に育てて家族を支えていけるようにするのが自分にできる一番の貢献かもしれない。

仕事の課題の多さにも気が滅入っていたが、やはりこの一件が一番精神的に堪えた。会社からの手当てを再申請できないものか打診したのだが、残念ながら却下された。こんな非常事態なのだから特例を認めてくれるだろうと甘い期待を抱いていたのだが仕方が無い。自分が自営業主ならこういうときに社内ルールなど吹き飛ばせるのだが。