DQ9

ネタバレ御免。

ここ最近、碌に返事もせずにドラクエ9なんぞをやっていたので終にゲーム機を取り上げられた。小学生か、己は。1日1時間までなどと親に言われて1時間がいかにゲームの進行上、非現実的で非条理な短さかと嘆いたものだ。

ネット上で賛否両論の本作だが、クリア寸前でお預けを喰らっている者の感想としていくつか。

物語に矛盾や不整合が多い。人間を創造した神が人間を過ち多くして他を平気で傷つけ、自己保身的に振舞う失敗作だと断じて滅ぼそうとしたのに対し、女神が人間に再度機会を与えるべく世界樹となって試練を課す。清き心を持つ人間だけが果たせる試練を。しかして結局描かれるのは、よそ者に偏見と差別を持つ人間であったり、自ら働くことを辞め堕落する人間であったり、欲に走る人間であったり。そして肝心な女神の試練に応えるのは人間に生まれ変わった天使であって人間ではない。もともと清き心を持った天使が「替え玉受験」しているようなもので、人間は救い難いものとして描かれたままで終わる。「結局人間に存在価値は無い」という神の主張を否定せずに終わるのは意地の悪い真意か。

最終ボス目前でレベル40の魔法使いが覚えている呪文がマヒャドというのもどうかと思う。メラゾーマイオナズンはどうした。僧侶もザオリクベホマズンも覚えぬまま。賢者になる必然性も薄い。旧作に比べて最終ボスまでに覚える呪文の種類が著しく減っているように思う。レベル40だと言うのに。ゲームバランスを若干欠いていやしないか。ゲームをクリアできる状態になってから、もしくはクリア後にひたすらレベル上げをしてようやく覚えられる呪文では面白みが無い。不要にレベルが上がってしまって手応え無く最終ボスを倒してしまったらそれこそ興醒めだ。

主人公は天使という設定で旧作のように勇者ではない。ライデインギガデインは出てこず仕舞。少し寂しくもある。天使という設定ならば天使らしい新しい呪文でも覚えてくれれば良いものを。

闘技場もカジノもモンスターを仲間にするシステムもない。おまけ要素は錬金と宝探しぐらいか。2年近く延期した割りに内容が薄い感は否めない。

昔の作はまだ「クエスト」であった。ヒントがわからずに延々とさ迷い続けたり学校で友人に聞いたり。そうするだけの適度なヒントの少なさがあった。進めなくなったので地図上で行ってない所に行ってみたら進展があったり、既に行った街の人に片っ端から話しかけてようやく進展があったり。しかし本作は、「あれをとってこい」、「こいつを倒して来い」と何から何まで示されるので展開が一本道だ。なにやら使い走りのようでもある。冒険、探求という要素は随分少なくなった。

30前の男が何を大人気ない、子供の玩具だと言われればそれまでだが、絵本であっても本当に良いものは大人の鑑賞にも堪えられるものなのだが。昔のドラクエは小説、アニメ、漫画など派生作品がたくさん生まれる魅力的な世界観を持っていた。本作にそんな予感はしない。