街と治安

ここは治安が悪い。ここから先は柄が悪くなる。ここの住人は黒人が殆ど。
同僚の車に乗せてもらった時も、友人の車に乗せてもらった時もそんな話が出てくる。ひとつの道を挟んで全く異なる家並みになったりするのがなんとも戸惑う。某本社のある都市は全米もっとも治安の悪い都市25にも数えられるらしい。

人種差別をする気は毛頭ないが、全米における黒人比率が12%程度に対し、ここでは43%にも上る。平均的に所得水準が低く家族構成も不安定な黒人層が治安悪化の一因であるのは残念ながらひとつの事実のようだ。世界を代表する米国企業の本社がいくつもおかれているにも拘らずその恩恵はそこまでは行き渡らないらしい。ダウンタウンを歩いていても近寄ってお金を強請ってくる浮浪者に、マニラでは感じない危険を感じる。自然、ここは彼らが住むところ、ここは私たちが住むところといった風に線引きして守るようになるのだろう。その一線を迂闊に越えると銃が許され不法侵入を主張できるお国柄、予想もしないことになる。

所得や階級に応じた住まいと地区が混ざることなくモザイク状に散りばめられているのが某都市の印象。友人の家のように、安全で魅力的な家々が並ぶ地区もたくさんある。単に滅多に行かないような治安の悪い地区もそれ以上にたくさんあるというだけなので住むには問題がない。マニラとて同様なのだが、ただそこに人種という要因が加わるだけで全く異質な水準のものに感じる。