散歩

先輩からダイビングに誘われたのだが、生憎にして食中りを起こしたようである。BreadTalkのパンを食べて数時間後から何回もトイレに駆け込む有様。まいった。海の中は冷える。ウェットスーツ装着時に催しては一大事である。仕方なく、断りの電話を入れた。

何かこう漫然と一日を送ることに耐えられず、かといってダイビングにいまさら参加するわけにも行かず。そこで今まで一度もでかけることのなかった方面へ散歩してみようと思い立つ。

ベランダから見下ろし、足元から視線を上げていくと一角に古そうな教会が見えるのが気になっていた。しかしその右手にはバラック街があることもあり、治安のほども確かでないこともあって躊躇していた。今日はそこに出かけてみることにした。

マンゴーを連れて、一眼レフを携えていきたいところだったが、初めてなのでTシャツに短パンにゴム草履、そしてポケットに入るコンパクトデジカメと所持金100ペソの身軽な格好で向かった。

実際歩いてみると、ロックウェル裏のバランガイは至って長閑で歩きやすい。日中だということもあるが、子供がそこらを走り回り、往来には人も多く身の危険を感じることは無い。拍子抜けしたぐらいだ。道もさほど汚くないし、今まで見た中では住み心地が良さそうな町並みにも思える。あくまで一瞥しただけの感想だが。

店の並ぶ二筋の商店街通りには、飯屋や美容室、雑貨屋などが並び人も活き活きとしていた。そんななかをアイスクリーム屋が独特の音楽を流しながらのんびりと走り抜けていく。マニラに1年半もいながら、ようやくごく普通のフィリピン人の生活を垣間見た気がした。次は一眼レフを持って人の表情を撮りに来たい。怒られるだろうか。

とは言うものの、橋からはスラムのような一角も目にした。川の水は腐っている。大量のゴミが川面を覆い、水はボコボコと臭気ガスが沸いている。洪水になって川の水が氾濫すれば疫病が流行るのも当然だ。川の上に立つ家の窓に赤ちゃんの姿を見た。窓には網戸がない。蚊が沸く事を考えると。。。高級マンションの直ぐ傍に閑静なバランガイがあり、その合間には劣悪な川沿いの家があり、その直ぐ奥にはバラック街がある。そんな混在した地域だということを改めて知った。逞しく育つか死ぬかの二択を迫るような環境。

うむ。このベランダチェアには怖くて座りたくない。川に落ちたらどこから這い上がるのだろうか。そもそもこの川の水は落ちても体がちゃんと浮かぶだろうか。

下の町並みから見るコンドミニアムは景観に溶け込むことなく威圧的でなんとも無粋な壁のようだった。

そちら方面の怖い人は、正月に天に向かって拳銃をぶっ放す。何もかもがうまくいってなかったら、むしゃくしゃして喧嘩を売るように聳え立つコンドミニアムにぶっ放したくもなるかもしれない。いや、撃ちたくもなるだろう。傍から見てこんなに感じの悪い建物に住んで居ただなんて。おそろしや。

正月に感じた懸念は杞憂ではない。運が悪くベランダに出てる住人は祝砲に倒れる。