エルニドの従業員

ラゲンだけでなんと100人もの従業員が住み込みで働いている。14人のアクティビティーガイドに始まり、フード&ビバレッジと呼ばれる飲食担当、清掃担当、事務、庭担当などなど。

3階建ての従業員宿舎が、72段の石段を越えた宿泊客の目に付かぬ入り江の脇の崖裏に建てられている。バスケットコート、卓球台、ビリヤード台もあるという。

従業員の大半はパラワン諸島出身で州都プエルトプリンセサに家族を残す者も多いという。休日は月に4日と少ない。バンカーボートでの移動中に様々に話をしてくれたガイドは、1日をかけてプエルトプリンセサの故郷に戻り、2日を過ごしてまた1日をかけて戻ってくるという。1歳、3歳、5歳の子供のいる彼にとっては短すぎる日数だろう。
普段は朝5時に起床し、大体21時から22時には床に入るという。プライベートディナーやナイトダイブなどが入ると23時まで働くことになるという。若く体力のある人で無くば勤まらない。

ちなみに従業員は20代から30代が大半を占め、そんな若い男女が寝起きを共にするわけだから当然恋愛もあるに違いない。突如身ごもって女性従業員が働けなくなる事態が続発しては運営が揺るぎかねない。そんな勝手な心配をあれこれしてみたのだが、予想に反して従業員間の恋愛も結婚も制限はされていないという。実際は従業員同士でデートをしようにも昼間の仕事で疲労困憊して宿舎に戻っても直ぐ寝るだけだと言っていた。

3日間の滞在中、不満を感じるような接客を一切受けなかった。複雑な宿泊者毎のアクティビティーを捌き、常に笑顔を絶やさず、宿泊客からの質問や要望にも適切に対応していた。こんなことを言っては失礼だがフィリピンでの接客は高級ホテルであろうとどこかしら粗が目に付くことが多い。比肩しうるのは空室率がそれなりにまだ高く、従業員の対応が手厚いボラカイシャングリラぐらいか。そこですら6ヶ月以上のトレーニングをしているそうなので、エルニドではかなりしっかりとしたトレーニングプログラムがあるのかもしれない。おそらくはトレーニング以上に、自分の仕事に自信と尊厳を持った、そのうえ非常に優秀な人材が宿泊客との接点の一番多いアクティビティーガイドに揃っているということなのだろう。

宿泊者がリゾートで寛ぎ、アクティビティーを楽しむ裏では従業員がけして十分とは言えない条件下で多忙を極めていたわけだ。なんとも頭の下がる話だ。