ターシャ

Loboc村にもターシャを見れる場所があるが、そこはチョコレートヒル帰りの観光客を当て込んだ檻に入れたような簡易的な場所のように思えた。そこでやはりチョコレートヒル方面とは逆のコレラ村にあるリサーチセンターにターシャを見に行くことにした。舗装路が途絶え、途中からは泥だらけの道を進む。運転手が行きたがらなかった理由も納得がいく。

世界最小のメガネザルらしいが、紛らわしいことに猿ではないらしい。メガネザルがそもそも原猿類だという話。猫などが入れないように柵に囲まれた保護林の中にターシャがいた。夜行性のターシャは手の届くような低さに眠そうに佇んでいた。これでは5メートルも跳躍できると言えど簡単に捕獲できてしまう。しかも雌のターシャは年に一頭しか子を生まないらしい。保護しなければ簡単に絶滅してしまう旧世代の生き物に思えた。

ほんの10センチの距離にまで近づくことができる。毛のひとつひとつ、尻尾に吸い付いている蚊まではっきりと見える。

今更ながらだが、目が非常に大きい。琥珀のような透明で反射する目。皆が可愛い可愛いとちやほやするが、形状だけを見れば随分と禍々しい姿格好をしている。指輪物語のゴブリン。等身大のターシャがいたら悪魔だ。あの細く鋭い爪の生えた長い指で背丈の15倍もの距離を跳躍して獲物に襲い掛かる。

実際は猛毒でも持っていない限り子供にも勝てないほどの小ささ。単に人間が絶対的優位にいるから感じる可愛さなのかもしれぬがな。小さきものは皆可愛いというやつかもしれない。目が大きいのやら、鼻が長いのやら、首が長いのやら、自然界の多様性は美しい。

リサーチセンターの裏は広大な森になっており本格的な散策をすることができる。柵の中の擬似的な状態ではなく、まさに自然な生息状態のターシャに会える。当日は装備が何も無い上に既に蚊に刺されていたので撤退することにした。わざわざリサーチセンターまで来る甲斐のある充実した一日。