食事の重み

コンサルテーションの場所をDACHからBENELUXに移す。ちなみにDACHは独逸、墺太利瑞西の頭文字を並べた呼び名で、BENELUXも同様に白耳義、和蘭ルクセンブルクの経済圏の呼び名である。

クライアントチームはポルトガル人、イギリス人、フィリピン人、フランス人、オーストリア人、オランダ人、ベルギー人の混合欧州組であり、かたやコンサルテーションチームはアメリカ人、フィリピン人、日本人の太平洋組である。

夜も一緒に食事に行くことが多いのだが、なんとも食事の時間が長いのに驚く。まずは麦酒や食前酒を一杯飲み、前菜から主皿、さらにデザートと珈琲まで4時間ほどかける。朝食、昼食が1時間づつだとしても一日の四半を食事に費やしていることになる。

出張費としての食費の上限を幾らまで認めるかと云う話で以前組織内で議論になったことがある。欧州での一般平均、亜細亜での一般平均をそれぞれ設けているのだが、中東や阿弗利加の監査を欧州勢、亜細亜勢の混合チームで行った際などに欧州勢がいつも高価なレストランでフルコースを食べるのに対し亜細亜勢は簡素な食事程度の経費しか認められていないとの文句も出る。

これは通常と代わらない程度の支出であれば必要経費として認めるという前提に立っている。つまり出張中だからといって普段より豪勢な食事を取るのは認められないが、出張があろうとなかろうと伴う程度の支出ならば認めようという話だ。この道理でいくと、常日頃から食事に金をかけている欧州勢ならば通常通りの食費も経費として認めねばならなくなる。

ただ欧州が食文化のうえで一枚岩かというとそうではないらしく、ポルトガルやスペインなどのラテン国やベルギー、オーストリアなどのカトリック教国は比較的食事を重要視するのに対し、質素禁欲を是とするプロテスタント教国のオランダなどではさほど食事に時間をかけないようだ。
また、同じBENELUX内のベルギー、オランダはどちらも外食費用が高いと聞く。しかし理由は間逆でベルギーは食事を重要視するが故に金をかけて当然という考えに立ち、オランダは外食文化が発達しなかったが故に割高なのだそうだ。当然レストランの水準はベルギーのほうが良い。

ちなみに夕食時に仕事の話をしないのは非常に好ましい。マナー違反、あるいは品がないという感覚があるらしい。確かに食事中にやたら仕事の話をしたがるのはオランダ人であった。