ノリタケアウトレット

嫁さんと嫁さんのお友達がノリタケという日本の洋食器ブランドのファクトリーアウトレットに行くというので同行してみた。

ノリタケブランドを冠する高級食器事業は、幕末の御用商人だった森村市左衛門が開国により海外に富が流出し続ける国を憂い、福沢諭吉から「金を取り戻すには、輸出貿易によって外貨を獲得することが必要だ」と説かれて発起して起こした事業のようである。パリ万博で陶磁器の将来性を感じ、8年を経て最新技術を学ばせに技術者を欧州に派遣し、さらに10年の研鑽を経て国産初の硬質磁器のディナーセットを生み出すに至る。以降米国に主に輸出し世界的ブランドとしての地位を確立した。今では洋食器で培った技術から派生した鉄鋼や電子半導体などの工業用研削研磨メーカーでもあるらしい。

また、森村市左衛門が興した森村組がノリタケだけでなくTOTO株式会社・日本ガイシ株式会社・日本特殊陶業株式会社の母体であるとは知らなかった。こと日本における白色硬質磁器、陶器、水洗トイレ、水洗金具の発展と普及は創業者の国の発展に対する気概によるところが大きいらしい。

そんなノリタケの生産工場とそのアウトレットショップがフィリピンのJ. P. Rizal Street Concepcion Marikina Cityにあったのだが、2008年9月末で生産を停止してしまったらしい。2009年6月現在も弊店特売を行っている。
ノリタケの食器事業の売上高の内訳は、国内が5割、米国が3割を占めている。米国市場は、米低所得者融資(サブプライムローン)問題で消費が落ち込み、ノリタケの今年上半期の米国での売上高は、前年実績を3割下回った。解散するフィリピン子会社は、月産20万個の9割が米国向けだった。フィリピンの従業員は全員解雇する。」とのこと。日本国内では日用食器生産を止め、既存の伊万里工場は熟練職人による単価50万円以上の高級白色磁器に注力し、海外向け及び日用食器をスリランカに集約していくとのこと。

こんなところにサブプライムローンの余波が及んでいるとは思わなかった。それにしてもフィリピンに集約されずにスリランカに集約されたというのが残念である。スリランカは依然として政情不安等の負の要素も多分に大きいだろうし、フィリピンの労働賃金単価がスリランカよりも別段高いとも思えぬ。やはり工場を移転してから唖然とすると言われるぐらい高いフィリピンの電力使用料の高さなどがそれら負の要素を上回ったのではないかと小生は疑っている。電圧は安定せず、停電も多く、日本より高い電気代であるにも拘らず多額のロビイングと裏表の財政支援により政府も電力業界の独占を黙認している悪名高きロペス財閥。少数権益の為に国の発展が阻害される典型例だと思う。

半年以上経ってしまっているので相当の余りモノでしかないのだろうが、それでも多少は残っていた。「エッセンスインブルー」のティーカップは日本での希望小売価格が二客8400円、実勢価格が二客5200円。アウトレットでは二客600円ほど。どこかに些細な傷がある品なのだが、飾るわけでもなし、いづれは使用傷ができることを思えば安い。「京香旬菜」シリーズも売られていたようだ。伏見唐辛子聖護院かぶら、鹿ケ谷南瓜、九条葱などがボウルや丸皿、角皿に描かれたシリーズで和食に似合いそうな小生好みの食器なのだが、残念ながらこれは淵の欠けてしまったものしか残っていなかった。

あまり高級ブランドには拘らないのだが、嫁さんの買い物魂に火が入ってしまったらしくティーカップを3模様で計16客も買ってしまった。さらに菓子皿やらをいくつか。花柄の西洋風高級磁器は華やかだが女性的すぎて違和感が強いのだが、嫁さんが友達を招いてお茶をするのに都合が良いのだろう。日本を発つ際に小生が買い求めた深川製磁の食器がそれなりの量あるのだが、ここに西洋食器勢が生まれたようだ。

今後はどんなに暑かろうと、我が家に来られた客人にはノリタケの食器で熱々の紅茶が振舞われることになります。