台湾

半年前の台湾へのコンサルテーションでは正直しんどい思いをした。「偉そうに内部監査の人間として来てるからには事態を改善すべく何を提案できるのか」「見れば入社数年の若造どもに何がわかる」というピリリとした空気を肌で感じた。どの部署にも余裕が無く、コミュニケーションミスにも課長や部長らですら容赦は無く、チームの新米社員も泣かされた。甘えかも知れぬが年配者が駆け出し社員になんと大人気ない、責めるのではなく助力を仰ごうと建設的な雰囲気を作り出せぬのかとも思ったものだ。

針の筵のようなといっても言い過ぎではなかったかもしれぬ。

状況を改善できる解決策を見出すことに必死だった。内部監査の来台は無駄足だったと思われぬよう意地を張らねばならん状況だった。しかし社長や営業部長を前にして打ち出した提案に対しても懐疑的な意見が相次ぎ、台湾に当て嵌まるかも疑わしいのに「アメリカの事例に疎いとは期待はずれだ」といった厳しい言葉から「もっと眼が覚めるような名案を期待していたのに」といった言葉まで頂戴した。

それが今や、懐疑的だった内部監査の提案を実行してみたら思いのほか成果が出たようで、成功例として本社に喧伝するまでになっている。皮肉のひとつでも言ってやりたい。そんな気持ちを抱いて今回台湾を再訪した。


半年して再会した台湾組織は以前のような暗さはなく、自信に溢れているように感じた。辛辣な意見をぶつけてきた堅物の営業担当者も笑顔で久しぶりと挨拶してくる。今回は助言だけのコンサルテーションではなく評価を突きつけねばならぬ監査だというのに、いろいろと相談を持ち込んでくる。この半年でそれなりの信頼を勝ち得たのだろう。

思い出すと苦い汚点のような経験も時間がたてば正反対に転ずることもあるとは面白い。摩擦も苦労も無いところに意味のあるものは生み出せないということなのかね。