ラゲン

Ten Knots Corporationという会社が経営する当リゾートにはラゲン島とミニロック島に向かい合うように宿泊施設がある。日本の砂糖メーカーをはじめ10社からの投資で作られた会社らしいが、日系資本は既に引いてしまっているらしい。

ラゲンは湾を囲むように18室の水上コテージを中心に構成されており、見事な夕陽を眼前に臨める。モダンで広々としており落ち着いた雰囲気がある。


エアコンの効いた室内と外のバルコニースペースで朝食、昼食を取れるほか、夕食はプールサイドと庭で雰囲気を変えて楽しむことができる。レストランはビュッフェ式のものがひとつあるだけで他に選択肢は無い。しかしこの手のホテルでは珍しいほどにビュッフェの種類も多く、何より味が良く食べ物に飽きる気だるさから救ってくれる。具材やソースを選んで目の前でパスタを作ってくれるブースや、肉や串焼きを選んで目の前で焼いてくれるブースも良いアイデアだ。昼はハロハロスタンド、夕はチョコフォンドュファウンテンがフルーツやケーキコーナー以外に設けられる。食べ過ぎてしまうほどに美味い。

ラゲンの宿泊棟は水上コテージしか見てないが、快適に過ごせるものだった。水上コテージといえど客室からそのまま海に飛び込めるようにはなっていない。何より汐が退くと浜上コテージになってしまう。ベッドリネンも清潔で、広々としたバルコニースペースが良い。イスとテーブルの他に防水加工の長ベッドが据えられており、水着のまま寛いでそこから外を眺めたり魚に餌付けをしたり楽しむことができる。

しいて我侭を言うならばバスタブが欲しかった。バスタブに張った湯船に浸かりながら外の景色をガラス越しあるいは半露天で眺められたらなんとも贅沢な気分に慣れるのだが。これはもしかしたら水が非常に貴重な当秘境リゾートの制約上叶わなかった設備なのかもしれない。

到着時には歌と踊りで歓迎された後にウェルカムドリンクが供され、当日のアクティビティーを手配してくれる。チェックイン時には室内のベッドの上にココナツの葉で細工された鶴が置かれ、ターンダウン時にはチョコレートと共に葉に手書きされたメッセージとエルニドの物語が印刷された紙が添えられる。そういった細やかな演出も口元が綻び心温まる。


よくもまあ、こんなところにこんな立派なリゾートを造ったものだ。ボラカイシャングリラのような巨大資本リゾートと比べれば遥かに客室数も設備も少ないけれど、そのこじんまりとした呈がエルニドには合っていたように思う。不便は無かった。10年後、あるいは20年後の節目に再訪してみたいリゾートである。新婚旅行を検討している友人にも胸を張ってお勧めできる。日本から程近く時差の無いフィリピンにこんなところがあるなんて。