Antonio’s

存在は知っていた。何やら予約困難なタガイタイで一番とも評されるイタリアレストランである。値段が高すぎるとの声もある。

2時を過ぎんばかりで昼食を取るタイミングを逸しかけていたので、試しにAntonio’sに向かってみることにした。看板の指示に従って左に曲がり、右に曲がり、随分と大通りから入り込んだ先に豪華な建物が現れる。せいぜいトライシクルが停まっている程度の長閑な住宅街に突如高級車が並ぶ空間が現れるのだから少し異様さがある。

コロニアルスタイルの白と黒を基調にしたシックな建物にヘゴの緑が映える。調度品も床のタイルもどれも洗練され、派手にならない高級感がある。

メニューを見て値段に驚く。最初の高級ステーキは13000ペソ。1000ペソより安いEntréeがない。確かにこれはどんなに美味い料理が出されようと割高かもしれない。手持ちの現金から宿の代金を引いて幾ら残るか勘定しながら、「夕御飯まであまり時間も無いですし、3人分を6人で分けて小腹を満たす程度にしておきましょうか」などと取り繕う。

気を利かせて既に半人分に取り分けて持ってきてくれたのだが、Entréeにはサラダとスープ、デザートが全て込みなのだという。半人分だと若干物足らない量だが、倍の量を考えると1人分としては随分と量がある。サラダはレタスなどにビネガーやブルーチーズ、ベリーなどでマリネされたもの、スープも甲殻類の味噌のスープで生臭くもなく濃厚で美味だった。メインディッシュの海鮮リゾット、牛肉のシチュー、卵麺もどれも美味い。他の料理も期待できそうだった。

カラフェで出されたフルーツジュースもマンゴーやポメロジュース自体を凍らせた氷塊を入れており、解けても味が薄くならないよう配慮されている。

デザートのパンナコッタ、ベリー類のパフェもしかり。日本人がリストランテに期待するイタリアンに近い味が出てくる。コースであることを考えると実はさほど割高ではない。むしろオーベルジーヌよりも安いし、店の雰囲気はこちらのほうが格段に好みだ。予約が取れない人気店だというのも納得。次回タガイタイに行くときは是非再度訪ねたい。