向くべき方向

違う切り口で物事を見ると、重要性や優先順位は変わる。

とある米国企業は常に英国の同様の巨大消費財メーカーをライバル視して来た。市場で抜きつ抜かれつ競り合っている会社だから当然かもしれない。

しかし主要株主の期待は何で、どう応えないといけないかという切り口で見た場合、事情は若干異なってくる。米国には年金組合であったり多くの有価証券を保有している株主がいる。確かに世界という規模で見たら英国競合企業を上回る製品力、売上と利益の成長を示すことが、この米国企業への投資魅力を高めることになる。しかし同等以上に重要なのが、当企業に比べて規模は何分の一であろう歯磨き粉で有名な米国企業よりも高い成長を示すことであったりする。年金組合などの米国の大口投資家は米国企業株式を一定割合そのポートフォリオに組み込む必要があるからだ。そして似たような安定性を備えた消費財企業が比較の対象になるからだ。そんなわけで、株主を気にする経営幹部は英国企業ばかり見ていないで、歯磨き粉会社よりも高い成長率と低い販管費率を達成しろと発破をかける。

巨大な日用雑貨製造会社。景気が悪くなったからといって突如、オムツや生理用品、石鹸、シャンプー歯磨き粉の使用をやめるということはない。反転、突如需要が伸びるわけでもないということでもある。米国だけで商っていた昔は米国以外の世界の全てがフロンティアだったが、今やそのような伸びしろは少なくなる一方。中国の都市部ではなく中国西域やアジアの低所得層など四苦八苦しながら成長余地を捜し求めている。株主の成長期待に応える為に巨大企業の買収を繰り返しているのもその表れかもしれない。

いい会社だなと思う。そして経営者はさぞかし大変だろうと下っ端社員は想像を膨らませる。

能力や資源はありながらも、成長機会が少なくなっていく中で成長させていく苦しみと
成長機会が膨大に広がる前で、十全とはいえない能力や資源で成長させていく苦しみ

どちらが楽しいだろうか。自分ならば後者。前者の苦しみはより閉塞的で、辛抱を要するように思えてならない。そんな中で方向を示さねばならぬ経営者の方々、ご苦労様である。