フィリピンでなぜスペイン料理が根付いていないか

確かにMadridを離れるほど食事は美味しくなってきたように思う。とはいえMadridがそんなに酷いとも思わなかった。


ところでなぜスペインに数百年も植民地支配を受けながらフィリピンにスペイン料理は根付かなかったのだろう。海に四方を囲まれ、内地では稲作が盛んな島国フィリピンなら大層美味しいパエーリャが作れるだろうに。残念極まりない。

仮説としては新大陸アメリカよりもさらに遠い地球の裏側フィリピンでは、スペイン人入植者が少なかったからかもしれない。限られたスペイン人は殆どが農場所有者などの支配者階級で恐らく彼らには邸宅に料理人がいたことだろう。市民階級層が少なかったとしたらフィリピン人のスペイン料理へのエントリーポイントになるようなレストランや食堂などもさほどなかっただろう。

家庭単位でのスペイン文化とフィリピン文化の本質的な融合も起きなかったのかもしれない。基本的にスペイン人とフィリピン人の婚姻は少なかったようだ。スペイン人の男がそこら中で無責任に子を作ったことは想像に難くないが、フィリピン人を正妻として娶る、フィリピン人家庭に入るということは少なかったようだし、それを促すような市民階級層が少なかったかもしれない。血の上では混血は進んだかもしれないが、スペイン家庭文化がフィリピン家庭に伝播していく機会が少なかった可能性がある。

また、フィリピンはメキシコを介した間接統治だったという話をどこかで聞いたように思う。スペインからしたらあまりに僻地すぎるフィリピンをスペイン国家の一部として整備していく意識は最初から薄かったのかもしれない。アジアへの拠点、あるいは金や他の資源でも産出されれば儲けものぐらいにしか思っていなかったかもしれない。

結局、フィリピンに最も影響を与えたのは米国だったのだろう。残念。