ITCマラーターホテル

乞食が町中を歩き回り、スラムの割合が多く、川にはごく自然な営みの結果として人間の死体が流れていたりする。そして無菌室のような街で育った日本の一部の若者が価値観を根底から覆されるところ。印度ほど極端な例を見ずとも、日本にも大抵の問題は転がっているのだが、そこは感受性の問題だろう。印度にバックパック旅行に行った学友が、帰ってきた途端に達観したかのように、「おまえらは生ぬるい生き方をしている。印度に行って真理に近づいた」などと言い出して、ぽかんと口を開けて印度恐るべしと感じる。自殺したいなんていうならとりあえず印度行ってみろ。何か印度は良くも悪くも衝撃を与えてくれるショック療法の国。それが今までの印度に対する先入観だった。

どうやら不適切な初印度への入り方をしてしまったのかもしれない。空港から車で15分も離れていない距離にあるITCマラーターホテルが今回の滞在先。中が大きな吹き抜けとなっており、細かい模様状の格子がどこか印度の宮殿を髣髴とさせる。オフィシャルレートは一泊2万8千ルピーとあるから5万円以上。もちろん大幅な会社割引があり実際にはもっと低い金額だが、それでも随分と豪華な部類だ。


ホテルに漂う微かな芳香は何だろうか。

部屋に案内してくれたボーイが、マンゴーなりスパイスなり欲しいものがあればなんでも調達すると言ってくれる。非常に礼儀正しく

例えばレストランで食べる時や荷物を預かってもらう際に部屋番号を確認されるのだが、こちらが言うより前にxxxx号室かと聞いてくる。顔と部屋番号を暗記しているのだろうか。おそるべし。

水盆に浮かぶのは蓮。3日ほどしか咲かない蓮を活けるあたりに格の高さを覗わせる。

印度人からしたら乞食やらカーストやら負の部分を見物に来て満足げに顔をしかめるよりも、印度の良いところを観て感動して欲しいと思うものではないだろうか。自分なら、捕鯨の漁港に来て、鯨を殺すなんて野蛮な。。。などと言いたいが為に日本に来る外国人観光客にはあまり来て欲しくない。そういう対象の国だとも思ってもらいたくない。

そんなわけで、印度で贅沢ホテル暮らしをする言い訳を自分の中に作り上げた。